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西洋漆喰に関する考察

コメントからのリクエストにお応えして
市場に溢れかえる「漆喰」について述べます。

言葉の通り、「なんでもござれ」になってしまっているというのがワタシの感想です。
漆喰という言葉が付けばなんでも健康に見えるからでしょうか?

全ては我が国において
「漆喰」に関する細かな規定がないことが原因しているのですが…

ここで国内唯一?の漆喰に関するキマリ。日本漆喰協会の漆喰の定義です。
【漆喰の定義】
日本漆喰協会では漆喰の定義を下記の通りとする。
<漆喰とは>
消石灰を主たる固化材とし、建築物の内外装又は天井等を鏝塗りなどによって仕上げる材料である。

<ドロマイトプラスターとは>
ドロマイトプラスターを主たる固化材とし、建築物の内外装又は天井等を鏝塗りなどによって仕上げる材料である。

<既調合しっくいとは>
消石灰を主原料とし、のり、繊維、無機質骨材、有機質添加剤などを製造工場において調合・加工したプレミックス製品である。

1.既調合しっくいの性状は、粉末状又はクリーム(練り物)状である。
2.既調合しっくいの組成
主原料である消石灰は、ドライベース換算で全重量の、上塗り用は50wt%以上、中塗り用は30wt%以上含有しなければならない。
3.既調合しっくいの品質
(1)不燃材料の性能を有すること(自主基準:加熱20分,総発熱量6.0MJ/m2以下)
(2)当会化学物質放散基準値を満たすこと(当会化学物質放散自主認定品であること)
4.既調合しっくいの施工
主として鏝塗りで施工する。

今後、標準工事標準仕様書・同解説JASS15左官工事の改定に伴い表記を変更する。

コレだけなんです。ということは、この規格さえクリアできれば他の成分がどんなものでも「漆喰」と呼べてしまうのです。

現状、漆喰とされているものを分類すると…
Wikipedia;漆喰より。(この部分はワタシが書いたのですが…)
分類名
内容
本漆喰
旧来漆喰とされてきたもの。現地にて昔ながらに海藻を炊いてのりを作り、麻すさと塩焼き消石灰を混合して作られる。
土佐漆喰
3ヶ月以上発酵させた藁と塩焼き消石灰と水を混合し、1ヶ月以上熟成させたもの。そのため藁の成分が発色し、施工直後から紫外線で退色するまでは薄黄~薄茶色の姿に仕上がる。練り状の製品しか存在しない。
既調合漆喰
いわゆる「漆喰メーカー」が製造した漆喰製品。一般に塩焼き消石灰と麻すさ、粉末海藻のり、炭酸カルシウムなどの微骨材が配合された粉末製品。水を加え練ることで漆喰として使用される。近年では海草のりに加え、合成樹脂を使用した製品や、化学繊維を使用した製品、顔料を混ぜて色をつけた製品もある。また、練り置き済み製品も存在する。
琉球漆喰
=ムチ(沖縄方言で餅の意)。藁と生石灰を混合したものに水を加え、生石灰に消化加熱反応を起させることで藁を馴染ませ、さらにそれを擂り潰し熟成させたもの。土佐漆喰に比べ藁の混入量が多いため、紫外線で退色するまでは濃黄~薄茶色の姿に仕上がる。練り状の製品しか存在しない。沖縄の屋根瓦工事を中心に用いられる。
漆喰関連
製品
近年上市されている、漆喰の機能を有するとされる塗料や消石灰が配合された輸入塗り壁材など。現状は既調合漆喰との区別をする規定がない。

近年、インターネットや雑誌広告で様々な「漆喰」が出ており、見分けもつきませんね。

もともと、漆喰とは我が国、海外に限らず石灰を塗りつけるだけのものだったのです。
極端にいうと、そのまま水で溶いて塗るだけでも良いわけです。

ただ、それでは塗りにくい上、ひび割れが入りやすい。
そのため、砂や繊維などを配合して作業をしやすくしたわけです。

地中海の白壁。おおらかですね。
Santorini
Santorini / paPisc


ところが、我が国においてはその漆喰が独自の変化を見せました。
それが左官の技。
ただ、塗りつけるだけの石灰に、技巧をつきつめ、芸術とも呼べる文化を構築しました。
その中で、鏡のように平滑に。紙のように薄く。髪の毛一本の歪みもなく。
顔が映るほど磨きあげる。立体絵画を創りだす。

そのために、海藻のりや細かく手を施した麻、紙などが配合されたのです。

…ちょっとやり過ぎた感もありますね。


では、質問のあった洋風の漆喰とはどれにあたるか?

1)ほとんどは「漆喰関連製品」または「既調合漆喰」にあたります。
2)海藻の代わりに作業性を与える保湿材など、樹脂が使われているものが多いです。
3)「海外の厳しい基準をクリア」…それはVOC放散などの基準ですよね?
4)F☆☆☆☆の認定。それは含んでいる化学物質からの影響が少ない。だけです。

一概にどれが、とは言えませんが、各社が公開している配合や実際の製品を触って見る限りどちらかというと、塗料やセメントモルタルに近い製品がほとんどです。

ただ、石灰が配合されているので、「漆喰なのかな~」と呼べる程度。
カタログでは大変素晴らしいものばかりなのですが…。

それなりの性能を謳っている製品は数ありますが
似たりよったりの感があります。

厳密なモノをお求めになるのでしたらともかく、
「漆喰風」でよろしいのでしたら、
いわゆる西洋漆喰(フランス、スイス、イタリア、ドイツなど?)で
それなりの雰囲気が楽しめると思われます。

ただ、極度の化学物質過敏症の方だけは注意してください。
少なからず反応する可能性があります。
本当に「天然素材100%」の材料は、市場にほとんど流通していませんから。
 2010-07-13 天然素材100%? 漆喰の見分け方
 2010-07-23 健康 自然素材 無垢 無添加 天然 … 本当に?

そんな時、安心できるのが日本漆喰協会の「化学物質放散自主認定制度
認定にあたり、全ての製品は外部機関で分析されます。
その基準値も、かなり厳しいです。
 「一般に売られる建材がF☆☆☆☆(フォースター)なら
 我々の漆喰はF☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(テンスター)だ!」と云うのですから。

しかし、それでも重度の方から相談があることも。
そんな方には、化学物質を本当に含まない(と思われる)製品を紹介しています。

また、
「アルカリ性でカビが生えない!」
「Co2を吸収して固くなるので和漆喰より堅い」

…いずれもウソですよ。

漆喰に直接は生えませんが、カビは発生します。
 2010-03-26  漆喰にカビが生える その1
 2010-04-23  漆喰にカビが生える その2
 2010-07-09  漆喰にカビが生える その3
 2010-08-28 多湿の夏、漆喰にもカビが生えます

Co2を吸収して固くなるのは消石灰(水酸化カルシウム)であれば当然です。
ご指摘の通り、和であろうと、洋であろうと、全く同じ。
ただ、その硬化にはたっぷり時間がかかります。本来、塗って乾いたばっかりの漆喰は脆いものです。樹脂や硬化材が多く含まれている製品であれば、すぐに硬く強くなるでしょうけれど…。

困ったモンです。
ですが、これでも流布している誤った情報は
他の建材に比べれば少ない方ですよ。

また、漆喰が和であろうと洋であろうと関係なく、木材が新しかろうと古かろうと関係ありません。

要は「デザイン」と「しつらい」。日本古来の漆喰と古材の組み合わせでも、素敵な洋風空間を創り上げることができますよ。