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低温下の漆喰施工にまつわるトラブルの実例

本格的な冬が近づいてきました。
全国的に漆喰の施工が難しい季節になります。

もともと左官工事は水を塗るとも言われる仕事。
漆喰も当然ながら水で石灰を練ったものです。

水って、摂氏0度を下回ると固まって氷になることはご存知ですよね?


凍結だけでなく、この季節、他の季節に比べて、多く発生するトラブルがあるんです。

というわけで、
低温下の漆喰施工にまつわるトラブルの実例をおさらいで紹介します。

トラブルその1) 下地養生の不足によるひび割れ

もうすぐ年末。建築工事の追い込みの時期です。
左官さんのお仕事は「仕上げ」。最後に漆喰を塗ってキレイに仕上げます。が、工期の遅延や天候不順などによって、工事日数が足りなくなることが多々あります。

で、間に合わせるために何とかするわけです。
当然、ご本人はゆっくり塗りたいのですが…。

誰かが待ってくれないのですね。

その為に起きてしまうトラブルが「ひび割れ」。
ご相談を聞いていると、原因で最も多いのが「セメントモルタルを塗って、ちゃんと期間を置けずに漆喰を塗った。」こと。

セメントは水和反応といい、一緒に練った水とセメントが反応することで、固まっていきます。表面の水分が乾いたから、といって固まったとはいえません。じわじわと固まっていくのです。

モノが固まるとどうなるか?
ほとんどのモノは収縮していきます。

セメントモルタルの上に漆喰を塗る場合、暖かい時期でもセメントは最低2週間、何もせず置いておく(これを養生といいます)べきだとされています。

で、養生せずに塗るとどうなるか?
セメントの収縮によって、上に塗った漆喰にひび割れが出来てしまいます。


トラブルその2) 工程短縮?によるひび割れ 

次に多いのが
「セメントモルタルの上に砂入りの漆喰を塗らなかった」こと。
しっかり養生してもまだ、下地の挙動は収まりません。
また、建物に生じる力が表面の漆喰に伝わります。

漆喰は塗られた時が最も柔らかく、乾いた後、今度は空気中の二酸化炭素を吸収しながら硬く硬く固まります。

だから、極力表面に伝わる力が少なくなるよう、砂入りの漆喰(中塗り漆喰)を塗るのです。そうして、中塗り漆喰が緩衝材となるわけですね。昔からの左官さんの優れた知恵です。

で、塗らないと?
やっぱり割れやすくなります。
でも、工期短縮のために省かれることがあるようです。
左官さんはしっかり塗りたいはずなのですが…。

トラブルその3) 乾燥条件不良による白化・白華

漆喰は消石灰を練ったもの。
消石灰=水酸化カルシウムは全てではありませんが水に溶けています。
冬季や梅雨の多湿時は洗濯物も乾きにくい季節。
当然、漆喰も乾きにくいのです。

では、水をたっぷり含んだまま乾燥条件が悪いとどうなるか?

溶けていたカルシウム分が表面に結晶を作り、白い粉を吹いたような状態になることがあります。
漆喰自体が白いため、分かりにくいこともありますが、なんとなくモヤモヤした仕上がり状態になってしまいます。

ちなみに、「おさえ」が足りずにテカるのも同じカルシウムの作用。
この場合は、ガラス状の結晶が出来てしまうのです。



左官職人さんは気候と乾燥条件を一生懸命考えながら、少しでも良い仕上がりになるよう、努力を続けていらっしゃいます。周りの皆様はよくご理解いただき、左官さんを応援してくださいね。