一片のムラなく仕上げられた壁を望むのであれば、漆喰ではなく壁紙や塗料をお勧めします。

2016年1月29日金曜日

よもやま

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冬場ならではの「漆喰あるある」のお話です。



寒いですね。漆喰をはじめとして、左官作業には厳しい季節です。

漆喰など、水を使う建築材料は原則として
 摂氏5度以下の環境では塗らないようススメられています。

 理由は、凍るから。

皆様ご存じの通り、水が凍る温度は0度です。
 が、作業する時間、つまり日中に5度を下回るということは?

そうです。その夜から翌明け方にかけての気温低下によって
 凍結する可能性があるわけです。


乾ききれば大丈夫?

 水を使う材料で、夕方まで作業して、その夜までに乾く材料はないはずです。


冬季に漆喰の作業は?

 お勧めできませんよね。
 でも、屋内での施工などでは作業に影響ないよう配慮しながら
 採暖など、いろいろと環境を工夫して行われることがあります。


洗濯物でさえ乾きにくい季節。「水を塗る」とまで言われる左官作業は乾燥と温度との戦いでもあります。

漆喰の代表的な仕上げ方法でもある「押え仕上げ」。
押え仕上げとは、皆さんが最もよく目にする艶のない平らな仕上げです。が、それはただ平らに塗れば良いというものではないのです。キレイに平らに塗り上げられた後、最後に「押え」という工程が行われます。

漆喰からある程度水が引き、ただ、乾いてしまわないうちに
 「押える」

それが漆喰を塗るのは難しいといわれる理由の一つです。
押えのタイミングは乾燥状態の見極め。
それは熟練した腕、というよりも目と勘であろうといわれています。

そこでタイミングがずれた時、どうなるか…


写真でわかりますか?テカリです。

水引きにばらつきがあったり、押さえが足りないと出てしまうテカリ。
これは漆喰の表面に石灰の結晶ができてしまうことによります。
逆に乾きすぎて押えた時には素材が磨かれることで、艶が出てしまいます。

その理由は原料の特性にあるのです。

漆喰の主原料である石灰は、皆様ご存知の通り、カルシウム。鉱物です。
自然界にあるカルシウムとして知られているものの一つが、水に溶けたカルシウムが結晶化した鍾乳石。まさに自然が創った芸術ですね。
秋芳洞
秋芳洞 / tatakaba_jp


先ほどのテカリの原因は鍾乳石が出来上がるのと同様のメカニズムで漆喰の表面に薄いガラス状の結晶ができてしまうわけです。

写真は方解石(カルサイト)と呼ばれる、その結晶。
こんな結晶が表面にうす~く出来てしまうんですね。


実際にテカリが出来た部分も、近くでよ~く見ると表層にオブラートのような、フィルムのような、透明の膜状のものがあるように見えるはずです。

そして、左官職人さんは当然、そうなることを知っています。
だから、出さないように神経をすり減らして作業するわけですが…

 乾燥の早すぎる夏、いつまでも乾かない梅雨や冬。
 とても難しい作業がさらに難しくなるのです。

 塗る面積が広ければ広いほど、タイミングをとるのも難しい。
 塗るのが厳しい季節でも仕事を断ることが難しい。

そのことをよ~く理解して下さい。
「漆喰は毎回毎回が初めての仕事だ」といった方がいます。

ほかの仕事でも同じといえば同じですが
それだけ真剣勝負であるということだけはお分かりいただけると思います。

でも、熟練した左官さんでもほんの少し…出来てしまうこともありますよね。
それは天然の素材を人の手で塗った証。

「漆喰にしたいな」とお考えの方、それを理解して下さいね。

一片のムラなく仕上げられた壁を望むのであれば、壁紙や塗料をお勧めします。

天然であるからこその不均一さを楽しめる方だけが、漆喰の素晴らしさを体験できると思います。

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