毎年、7月17日になると思い出す恩人がいます。
…と毎年書いています。
実は1990年代にも関わらず、ワタシの初めてのアルバイトは、ジャズ喫茶でした。
横浜のうらさびれた街の知る人ぞ知る小さなお店。
名物?は頑固で優しいマスターとジャズのレコード、そしてトイレのドアに貼られたウッドベース。
お客さんの大半は常連さん。
淡い照明の中、スピーカーから流れる大音量の中、一心不乱に聴き入る人、お酒を飲みながらゆったりと酔う人、冷めたコーヒーをすすりながらくつろいで読書する人、そして二十歳そこそこのワタシに、人生の苦楽について語る人。
大好きな音楽が聴け、大好きな人たちとハナシができる、ワタシにとって、とても幸せなお店でした。
バイトの担当は土日の週2日。
お皿を洗いながら、お皿(レコード)を回す、幸せなひと時です。
自分も演奏するウッドベースが聞き取りやすいピアノトリオばかり回して、よく常連さんに注意されたものでした。
バイト以外の日にも、音楽サークルの仲間と共に店に通い詰め、音楽を聴きながら飲んだくれていました。
ワタシの一番大事な青春の思い出は、薄暗いその店の中にあります。
そんなお店の月1イベントが17日。
マスターが好きだったジョン・コルトレーンが亡くなった7月17日にちなんで、17日の夜に回すレコードはリクエストも含め、全てコルトレーン。
常連さんにもそれぞれミュージシャンのこだわりがあり、その日の来店を避ける人が多かったと思います。だから、その日のことを忘れてやって来て、すぐに帰る人まで(笑)
それでも、お客が数人しかいない店のカウンターの奥でマスターは優しい笑顔。
「今日はコルトレーンの日だからね。あの人は帰ったんだよ。」と。
優しい方でした。
大好きな方でした。
誰もがマスターのことを大好きでした。
お葬式の後、新たな方にお店がわたるまで、お手伝いを続けたあの店は当時とは全く違うようですが、今も残っているそうです。
情けないことに、いまだに思い出すと泣き出しそうになるので、マスターの命日には何もしません。
写真も思い出も、何もかもしっかりとしまい込んでいます。
が、今日だけは別。
年に1度、マスターのことを思い出してしまいながらコルトレーンを聴く日です。
I want to talk about you
I hear a rhapsody
In a sentimenal mood
On green dolphin street
Olé
It's easy to remember