偲ぶ

2021年7月17日土曜日

よもやま

t f B! P L
今年も、今日だけは故人を偲ぶ個人的なハナシです。



毎年、7月17日になると思い出す恩人がいます。
90年代であったにも関わらず、ワタシの初めてのアルバイト先は、ジャズ喫茶でした。


横浜のうらさびれた街の知る人ぞ知る小さなお店。名物?は頑固で優しいマスターとジャズのレコード、そしてトイレのドアに貼られたウッドベース。

お客さんの大半は常連さん。淡い照明の中、スピーカーから流れる大音量の中、一心不乱に聴き入る人、お酒を飲みながらゆったりと酔う人、冷めたコーヒーをすすりながらくつろいで読書する人、そして二十歳そこそこのワタシに、人生の苦楽について語る人。
大好きな音楽が聴け、大好きな人たちとハナシができる、ワタシにとって、とても幸せなお店でした。

バイトの担当は土日の週2日。お皿を洗いながら、お皿(レコード)を回す、幸せなひと時です。自分も演奏するウッドベースが聞き取りやすいピアノトリオばかり回して、よく常連さんに注意されたものでした。
バイト以外の日にも、音楽サークルの仲間と共に店に通い詰め、音楽を聴きながら飲んだくれていました。

ワタシの一番大事な青春の思い出は、薄暗いその店の中にあります。


そんなお店の月イチのイベントが17日。マスターが好きだったジョン・コルトレーンが亡くなった7月17日にちなんで、17日の夜に回すレコードはリクエストも含め、全てコルトレーン。常連さんにもそれぞれミュージシャンのこだわりがあり、その日の来店を避ける人が多かったと思います。だから、その日のことを忘れてやって来て、すぐに帰る人まで(笑)

それでも、お客が数人しかいない店のカウンターの奥でマスターは優しい笑顔。

 「今日はコルトレーンの日だからね。あの人は帰ったんだよ。」と。

優しい方でした。
大好きな方でした。
誰もがマスターのことを大好きでした。


お葬式の後、新たな方にお店がわたるまで、お手伝いを続けたあの店は当時とは全く違うようですが、今も残っているそうです。

情けないことに、いまだに思い出すと泣き出しそうになるので、マスターの命日には何もしません。写真も思い出も、何もかもしっかりとしまい込んでいます。

が、今日だけは別。年に1度、マスターのことを思い出してしまいながらコルトレーンを聴く日です。

I want to talk about you


I hear a rhapsody

QooQ