11月22日は「和歌山県ふるさと誕生日」。
和歌山と云えば「熊野灰」のおさらいです。
熊野灰は、現在では失われた伝統素材の一つに数えられる、漆喰の原料です。
灰というからには石灰の種類の一つなのですが
原料となる素材がちょっと違います。石灰鉱山から産出される石灰石ではなく、「菊目石」と呼ばれる造礁サンゴが原料となります。
写真;沖縄の古民家の礎石に使われた菊目石
これらを河口や海岸で拾い集め、また時代によっては沖合に出て海中から採取して集められ、杉、ヒノキ、松などの古材や間伐材の枝や根っこなど、不要な木材を薪として焼成されていたそうです。
歴史的には近世江戸から大正辺りが全盛期。
和歌山城も熊野灰で塗られたとの伝承も残るとのこと。
和歌山は漆喰に使う他の原料産地であったことも知られています。
海からは布海苔などの海藻のりも採られていましたし、すさに使われる素材も関西一円で十分に入手可能。
そしてクジラ漁業もあったことから、鯨油も手に入ったわけです。
まさに良質な素材が手軽に手に入る場所…だったのでしょう。
ところが、
次第に他の産地の石灰の流通により取って代わられたこと、
環境保護の観点から菊目石の採取が制限されていること
などなどから、昭和50年代あたりで途絶えてしまったようですね。
歴史に名を残す素材、どのような違いがあったのでしょうか?
再現してみたい、そんな気持ちになります。
日本建築学会大会学術講演梗慨集
「熊野灰を用いた漆喰工法(熊野灰の生産・流通及び漆喰工法)」を参考にさせていただきました。