これな~んだ?
左官工事の中でも、特に土壁のちり周りに使う「のれん」というものです。
「のれん」とは何か?
一般に「布連」と書かれますが、詳しい説明は昔の文献で…日本壁、真壁の柱との散りを防ぐ為に用いられるもので、竹片に麻布又は木綿布を縫付けし竹片の方に釘を通じて柱に打付ける。麻布を中塗り又は散り漆喰の時に塗込み、柱と壁との散りが隙間の出来ぬ様にする。大きさ普通長さ30cm(1尺)麻布4.5cm(1寸5分)巾のもの、竹片厚約0.9mm(3厘)巾4.5mm(1寸5分)乃至6mm(2分)位麻布取付けて巾3cm(1寸)竹片30cm(1尺)に柱に打付ける釘数13本位、釘の大さ1.3cm(1/2吋)以下のもの。 ― 左官辞典(ヤブ原出版部)
のれんとは長さ20cmくらいの細い竹棒の全長に幅3cmくらいの麻布を張付けたもので、竹棒を棹に見立てると商家ののれんに似ているのでこの名がある。これを柱・回り縁・雑布摺などに印したちり墨(中塗り仕上りの線)にそって打ちつけ、土または漆喰で麻布を押える。 ― 左官工事 -材料と施工法-(山田幸一)
つまり、柱と壁との間に隙間が出来ないように考えられた先人の工夫の一つ。
実際、貼った布に切り込みを入れて使われるので、まさに暖簾(のれん)のように見えるんです。
布連(のれん)の製造現場へ
今、大変希少な資材ですので、詳細な制作過程は非公開ですが、ご紹介できる部分だけでも…。幅と長さが綺麗に切り揃えられた何千枚の布の束が用意されています。この作業だけでも本来、大変な苦労ですね。
で、布貼って釘打ってと、なんだかんだあって出来上がると、こんな姿。
これを左官さんが一本ずつ散りに打ち込むわけですね。
ちなみに、半世紀ほど前に作られたという布連も見せていただきました。
2つを比べると違いが分かりますね。
左が現代のもの、右は半世紀前のもの。
伝統は受け継ぐもの。ただし時には革新も必要です。
新たなものには半世紀の時を埋める創意工夫が込められていました。
違いは籤の形状や布の幅だけでなく素材にも。現場の要求に合わせ釘は現在はステンレス。籤や布の素材も変えたのだそうです。
国内にあと何か所、制作している方がいるのでしょうか?
そして布連を使っている左官さんが何人いらっしゃるのでしょうか?
左官職に就いても、伝統的な土壁工事を行うことが無ければ、一生、見ずに触れずに終わってしまう伝統左官資材のひとつがこの「布連」でした。
伝統は受け継ぐもの。
けれど、需要(使い手)と供給(作り手)があまりにも少ない事実。
作っている人がいること、しっかりと伝えさせていただきます。